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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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 さぞかし、天邪鬼でひねくれ者だと思われるだろう。
 大人たちの顔を潰したあとで、「やはり来年、里見高等部を受験する」などと言い出せば……
 弟のこともある。
 兄の都合で、生まれ育った倉鹿から引き離してもいいのだろうか。
 弟は、駅からの帰り道で「東京に行けば、いるかちゃんにまた会えるんだよね?」と泣きながら口にしていたが、もしそれが実現するのなら決して一時的なものではない。
 弟には、それもすべて分かっていたのだろうか。

「徹、思ったことをちゃんと言ってくれよ。俺に遠慮しなくていいから」
「うん……」
「来年、東京の高校を受験しようと思ってる」
「……」
「二月の時と同じ、里見学習院だけど……今度は俺が自分から決めたんだ。――おまえには全部見られちまったし、隠そうとも思ってない。決めた理由のひとつは、いるかだよ」
「うん、お兄ちゃん」
「……おまえは、この家から離れたことがないもんな」
「お兄ちゃんが決めたんなら、ぼくも行く」
「当分、帰って来られないんだぞ。学校も替わらなきゃいけないし……本当にいいのか?」
「ぼくも行きたいよ、東京。お父さんがいるし、いるかちゃんにも会える」
「……」
「でもね、お父さんにお願いしたいことがあるんだ。ぼくたちがいなくなっても、この家はそのままにしててほしいって。ここにはお母さんがいるんだから」
「……」
「この家がずっとあれば、ぼく、東京でもどこでも行けるよ」


 それでは、兄が泣いて懇願して弟を連れ出そうとする訳ではないのだ。
 弟も、自分の意思で外の世界に触れようとしている。
 あの時、彼女が消えていくのを見たのは自分だけではない。少しだけ大人になったのも自分だけではない――
 兄は、そう思った。


「まあ――自然にそういうことになるよなあ。二月の時とは事情が違うし、あんまり驚きゃしねえよ」
「まだ、俺が決心しただけって話だけどな」
「それで十分だろ。おまえには」
「……」
「院長には? 松平先生にも、もう話したのか?」
「まだ誰にも言ってない。……今度は、真っ先におまえらに話そうと思ったから」
「なるほど。俺たちに真っ先に宣言できるぐらい、本当に本気だってことだ」
「……」
「やれやれ。これが知れ渡ったら、修学院高等部の野球部が悲嘆のどん底だぜ。来年はおまえが来るって思ってただろうに――俺たちだってな、なあ。進、兵衛」
「ま……少しはつまらねえかな」
「――少しかよ」
「かなり……かな。鹿鳴会の会長が二人ともいなくなっちまうんだぜ? それでも、おまえがやると決めたらやり通すってことは分かってるし、俺たちが何を言ったところで聞かねえだろ。だから、もう驚かないって言ってんだ」
「……悪いな、俺だけ抜けることになっちまって」
「悪かねえよ。そりゃ、ちょっとは寂しくはあるけどな……それで、いるかにはもう話したんだろ? あいつ、何て言ってたんだ?」
「まだ言ってない」
「おいおい、春海」
「学習院高等部の募集のこととか、調べてたんだ。徹とは昨夜、話し合って決めて……親父にも連絡はしたよ、俺はそう決めたからって。まだ向こうから電話が来ないけど、もともとは親父が言い出したことで反対するとは思えないしな。だから、先におまえらに話して――二月の時におまえら怒ったじゃねえかよ、水くさいって……だから――それからいるかに話そうと思ってたんだ。希望的観測じゃなくて現実の話でないと意味ないだろ。……今夜、電話する」
「……それを三日で全部やったって? おまえって……」
「あいつが行っちまってから三日もせずに決めたって? 春海、おまえ……」
「いや、いるかだろ。どっちかって言うと」
「そうだな、いるかだよ。春海にこうまでさせるあいつが普通じゃねえんだよ。あいつが相手じゃ敵わねえ」
「……」


 悪友――そして幼なじみである親友たちは、彼までいなくなるという寂しさを隠そうとはせずに、それでも彼を励ましながら笑った。
 故郷を、友人を後にする。それは少なからず痛みを伴うということだ。まさに今、そんな痛みを実感しながらも、彼はもう自分がここに留まることはできないと知っていた。


 東へ向かえと、夏の終わりの風が囁いた。
 彼はそれを聞いてしまったから。


「――もしもし、如月さんのお宅でしょうか。倉鹿修学院でいるかさんと同級生だった山本と申します。いるかさんはご在宅ですか?……」


 東へ向かう。
 そこには彼女と、彼女のいる日々が――
 そして、広大な未知の世界が待っている。











 GO WEST/Pet Shop Boys






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小林りり子
性別:
女性
自己紹介:
妄想を垂れ流す女。
当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

当ブログは、非公式の個人ブログです。
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