春海が私を見るとき、私もまた春海を見つめているのだ。
なんて、いつかどこかで聞いたような言葉だけど、それって本当。
といっても春海はとても鋭いから盗み見するような隙もないんだけど、あたしが食べていると最初は笑う。食べ過ぎていると──本人にとっては適量なのにね──ちょっと真顔になって「おまえの内臓はどうなってるんだ」と首を振り、さらに食べつくしているとまたまた笑い出す。
そういうときの春海の目とか声とか、あたしはとっても好きなんだけど、春海にもあたしは幸せそうに見えて好ましいらしい。
でもやっぱり、毎回のこととは言え呆れてるんだろうなあ。
いつか俺はおまえに、食べるよりもっと幸せだって言わせたいよと帰り道に呟いていた。
そういうときの春海の表情を、あたしは覗き込まないようにする。
なにかに取り込まれそうな気がするから。
二人のあいだにぽっかりと穴が開いていて、そこに招かれている気がするから。
私が彼を見るとき、彼もまた私を見つめているのだ……
哲学者の言葉どおりに、一方通行の視線なんてあり得ないと思うから。
***
だって、言うなら、それって……『別腹』じゃない?
幸せって何種類もあるし……
食べるのもしあわせ、春海と居るのもしあわせ……
[6回]