※時系列としてはワープカテゴリーですが、平穏な小話なので公開設定にしております。
彼は何を考えているのでしょう。
この数年間で気づいたのですが、春になるといつも以上に視線を感じます。
とくに、お花見をしている時に。
最初は……三年前ぐらい? お見合いした春だったかなあ……
どうしたのって聞いても笑うだけで答えてくれないし、次の瞬間すぐにまた違うことを考え出すのがわかるんです。
その表情が何だか……遠い目をして……どこを見ているんだろうって……
ほんと、何を考えているんでしょう?
桜を私を見比べて首を傾げ、不思議なものでも見るように。
…………?
今さら「こいつ、花見に来てるのに食うことばっかりだな」なんて思われているんだったら──ほんと、それ、今さらじゃないかな。
困っちゃうなあ。
春って大好きだけど、でも、落ち着かないね。
すぐに消えてしまう霞みたいな花だけど、毎年ふたりで見られるのが幸せなの。
◇
早すぎるということはない。
しかも、実物を見ながら想像を描けるのは一年にほんの数日間。そんな機会を逃せるものか。
雪洞のような花をヴェール一面の刺繍にするか、色は白か──真白というのも面白味に欠ける気がするので、ほんの少し淡い桜色がいいのか。
刺繍は裾にだけあしらう方が似合うかもしれない。
いや、いっそ一面に小さな小さな真珠を。
…………
本当に、何を考えているんだろうと我ながら可笑しいが、結論としてはやはり「早いに越したことはない」なんだよな。
もちろん本人の好みが最優先で、男の意見など蹴散らされてしまう可能性の方が高い。ここは女性親族がやたら強い家系ということもあるし……
ただこの一瞬を楽しめばいいはずなのに、いつかの光景を想ってしまう。
困ってしまう。
春になると、何かに急かされる。
霞のように消えはしないかと、手を離せなくなる。
だから俺はこの季節、未来を見たいのかもしれないな。
◇
また明日も見に来ようよ、散るまで毎日。ねえ?
彼女が言い、小さな肩を抱いた彼も笑った。
[7回]