[11回]
六月が終わる頃。
帰り道に咲く紫陽花を見て、土壌のPHで色が変わるんだ、酸性だと青でアルカリだと赤……云々と科学の話をしたら、聞いていない振りをされた。
その笑い顔が、とても……子どものようだったので、傘を奪い取り、俺の傘で視界を塞いで悪さをしたくてたまらなかった。しかし雨模様だとは言え人通りがあったので、諦めた。
七月になっても名残の梅雨に花は濡れていた。
今度は、あいつの方から「なんでこんなに色が変わるの?」とご下問があったので、先日の説明をまた一からした。こういう花だから七色変化、八仙花という別名があること。変化するが故に、移り気、無常──といった、あまり前向きな花言葉でないことも。
紫陽花や 昨日の誠 今日の嘘
子規はこういう歌を詠んだ、ということも──
色が変わるのは花のせいじゃないのに。
移り気なんて、嘘つきなんて、かわいそう。
嘘をつきたい訳じゃないのに、かわいそう。
七月のあいつはそう呟いて、笑いはしなかった。
数日前の六月と何が変わってしまったのか、目の前の花が何色になったのか。
俺には見えず、気づくこともできなかった。
◇
6月までは何も知らなかった、
7月になって隠し事のできた15歳の初夏。
この先に「なかない蛍」という時系列です。(写真はフリー素材)