[8回]
昔の私は、そもそもミュージカルに偏見を持っていた。
開眼したのは2000年に入ってからで、しかも開眼してからも「Eliasbeth」「Mozart!」「Rebecca」などのウィーン・ミュージカルしか好みじゃなくて――たぶんどんな作品でも見ればそれなりに好きになるんだろうけど――数少ない例外がマドンナ様の「Evita」と、監獄&裁判モノの「CHICAGO」、ゴシックロマンの「Phantom of the Opera」。
これだけ。
何よりも、開眼した当時の私の記憶からはいるよろの存在自体すっぽり抜け落ちてしまっていた訳でして、ウェストサイドを見たいとか、いっぺんどうしても見ておかなきゃと思うこともなかった。
2012年ですからねえ、思い出したのは。
ということで、ようやくDVDを購入。生まれて初めてのウェストサイドです。
用事をしながらなので、一気に全部見られないのですが。
(150分って長いわあ)
普通の感想 どう見てもベルナルドがいちばんかっこいい。
それから、ベルナルド&リフが死んだあとにアイス(?)が復讐に逸る仲間たちに「クレイジーボーイズ、クールになれ」と諭す場面は、
「もっと早くそれを言えよ、バカ野郎」と真剣に突っ込んでしまった。
人が死んでからじゃ遅いんだよバカ共が。
(どうしてもドク視点になってしまう)
大雑把に言うとジェットが白人不良集団(イタリア系アメリカ人)、シャークがプエルトリカンなんですね。
だからシュランク警部、露骨にジェット寄りだよなあ。
しかし、これがたった二日の出来事と思えますか……?
落ち着けよおまえら……本当に……
ロミオとジュリエットからの伝統にしても、ちょっとは冷静になれ。
というか、こんなはっきり寝台遊戯があるなんて……まあ、その前後だけにせよ、トニーさん半裸だしマリア下着だし……
とてもじゃないけれど、中学生の舞台では不可能ですね。
マリアが自分から「抱いて」って言うのですよ。たまげましたね。
ダンスは本当にかっこよかった! ベルナルドかっこよすぎ!
しかし、主役のはずのトニーとマリアがほとんど踊ってないってどういうことなの。
いるよろに沿った感想 これきっついわー、本音を隠して練習するのはきつすぎる内容だわー。
もちろん、舞台脚本の全部が映画そのままじゃないだろうけど、色々きつすぎる。春海、かなり生き地獄だったんじゃないかと思われます。
「こんなことが起きるなんて予想以上だ。きれいだ……」
「あなた、すてき……」
見つめあう二人。
「あなたの手……あたたかい」
トニーの手を握り、それを自分の頬に当てるマリア。
そして自分の頬に触れるマリアの手にキスするトニー。
「トニー、本名は?」
「アントン」
「――愛してるわ、アントン」
「愛してる、マリア」
き・つ・い・わ!! It's so hard! キツイわ!
春海だけじゃない! いるかも相当きつかったんじゃないの? これ……
トニーに「行かないで」ってすがりつき、「抱いて」って……絶句した。
この辺り、どうやってぼかしたんだろう……
あと、作中でもかなり(映画から)アレンジされていることが伺えて面白かったです。
ブライダルショップで再会した時の、「マリア、会いたかった! 君を離したくない云々」などのセリフは、映画じゃ存在しませんでしたよ。
これ、まさか全部トニー山本さんのアドリブなのかしら……恐ろしい子!
「銃でなく、憎しみでトニーを殺したのよ!」というところもその後、マリアが銃を構えて「私も殺すわ。憎いから! チノ、何発残ってるの?」とか……
すぐ泣き崩れたにせよ、迫力があって怖かった。
そして「彼にさわらないで! 愛してるわ……」というのも、省略されていたんですねえ。
こんなのいったい、どうなのよ春海。
なんで練習中に音を上げなかったのか!!
なぜ、せめて一馬たちには「今はまだ断言できないけど、もしも親父の企みだったら里見には行かない」と言えなかったのか!
言わないところが春海なんだけどさ!!
マリアが父親に「マルカ」って呼ばれているシーンは割と本気で「韻を踏んどるじゃないか!」と驚愕。いるかとマルカ……
しかしベルナルド一馬、アニタ銀子って素晴らしい配役ですな。
一馬ったらめっちゃ役得やんかー。(なぜか大阪弁で)
これどう見てもベルナルドがいちばんかっこいいって、絶対。ダンスもキレキレだし、長身でニヒルな容貌。一馬にぴったりね。
チノはほとんど目立たず終わった。当て馬の役目しかなかった……
それにしても、マンボでアクロバットは難しいと思うぞ! タイミングが!
兵衛のシュランク警部もきっとハマっただろうなあ。
しかし、ドクじいちゃん役は誰だったのか謎が残るのであった。
かなり以前にこういう絵を描いたことがあるんですが、劇中でも金網が特殊効果的に使われていて、最後にトニーがマリアを見つけるのも金網越しだったのが印象的だった……
恐ろしい偶然だけど、トニーもシャツがはだけてた。
(舞台での春海って、ほとんどTシャツ姿だったけど)
以下、日記なのに文章を書いてしまう。(本来は雑記に書くべきなのに)
指が勝手に動くのよ、指が!
◇
「おまえ、練習終わるたびにやつれてねえか? 春海……(理由は薄々分かるけども)」
「……」
「まあ、俺もまさかいるかに向かって『俺の宝石だ』なんて言う日が来るとは思わなかったけどなあ。妹を溺愛しすぎだよな、ははは……(おいおい、睨んでるよこいつ……)」
「………………」
ちくしょう、俺の言葉は何だってこんな遠慮がちに、いかにも演技のように口から出てくるんだろう。――もちろん、演技でなければやっていられない、こんなことは言えない。
それは分かってるけど……
アントンはマリアを妻にし、マリアはアントンを夫にし、
富める時も 貧しき時も
病める時も 健やかなる時も
死が二人を分かつまで愛し、慈しみ……
「人違いじゃないか? どこかで会ったことが……?」
『あるよ』
「……」
『六年前、あたしが倉鹿に来た時に……ずっと待ってたんだよ。今日、何かいいことが起きるって知ってたの……』
脚本にないセリフをあいつが言う夢を見た。
主役を演じる身として、こんなことを言うのはどうかと思うが……一目惚れなんか俺は信じない。いや、まったくあり得ない訳じゃないだろう……
だけどもう少し冷静に考えて――出会ってたった数日で、生きるの死ぬのと騒ぐなよ!
解決策があるかもしれないだろ。落ち着けよ、おまえら!
そうしたら、幸せになれたかもしれないのに。
(あいしてる、トニー)
舌ったらずな声で何度も何度もささやかれて、それでも何とか正気を保っていられる自分を誉めてやりたい。