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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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 すべてが終わってから考えてみた。

 確かにあいつは変だった。
 まさかまだ隠していることが残っているとは誰も思わず、俺も思わなかった。
 ただひとつ――「夏が終われば東京に帰る」という大きな事実だけが、けたたましい蝉の声のように響き渡る。
 だから、あいつが最後の隠し事を貫こうとしているのを、俺は――俺以外にも、誰も――見抜くことができなかった。
 試合が終わって、皆に囲まれていたあいつは俺を見た。
 今にも泣き出しそうな顔で笑った、ごめんねと言った。だからもう、それ以上は何も聞けなかった。


 どうして最後まで……? おまえらしくもない。
 最初からあれほど派手な登場の仕方をしたおまえなのに、最後だけ静かにひとりで消えようなんて……そんなこと、俺は許さない。
 さんざんこの学校を、この倉鹿を振り回して騒がせておいて明日になったらもういないだって? あれほど修学院を、倉鹿を引っかき回して……そんなこと……いや、違う!
 違う、違う!
 引っかかれたのは俺だ。振り回されたのも俺だ。
 忘れられないのも俺だ、忘れたくないのは俺だ!
 俺が初めて触れたのは……誰かに触れたいと思ったのはおまえだった。
 だから、もしどうしても戻らなきゃいけないと言うのなら、せめて約束をさせてくれ。
 一言だけでいい、一瞬だけでもいい。
 このまま消えるなんて俺は許さないし、もし間に合わなければ、こうなるまで気づけなかった自分を許せない。
 そして、夏がこのまま終わってしまうのか?
 それだけは嫌だ。嫌なんだ……


 いるか!
 おまえが好きだ!


 電車の音も、汽笛も、風の音も何もかも越えて、それだけは届いてほしかった。
 どうしても俺たちが一度離れなくてはいけないのなら、俺はそれを受け入れようと思う。また必ず会える、会うと自分で決意さえすればいい。
 当分の間、離れることだって受け入れてみせる。
 でもそれは明日からだ。
 今日は……今日だけは……


 春海……春海……
 まるで、こだまのように繰り返される声。


 許すも許さないもない、俺はおまえにもう一度会いたい。
 何も言わずに消えてしまっても、小さな嘘をついても……それを許せないからおまえを憎むなんてことは、俺の感情の中にない。
 進にも、おまえにも何も聞くことができなくて、俺は何日を無駄にしてしまったんだろう。そんな狭量な自分に怒りを感じるだけなんだ。
 おまえを許さないなんて言う資格は、俺にはない。
 おまえを責めようとも思わない。苦しいのは、辛かったのは――悲しかったのはおまえだから。おまえがいちばん辛かったんだ。


 春海……春海……
 それはまるで、こだまのように繰り返されて……

 きっと今、ひとりで泣いているおまえを俺は抱きしめることができない。
 明日おまえに会いに行くこともできない。泣くなと慰めることもできない……

 また電車がホームに滑り込んでくる。
 同じ場面の繰り返し――発車ベルが鳴り、音を立てて揺れ始め、レールの上を走る。そして視界から消えていく。
 おまえが見えなくなった瞬間、夏は終わってしまった。
 でも、夏に一方的に別れを告げられるんじゃない。
 俺からもさよならを言おう、この夏に。次の夏にはおまえのそばにいたい、おまえの泣き顔を見たくない。だから今までの自分に別れを告げよう。

 ただの子供で、嫌になるぐらい無力で、ほんのわずかな約束しかできなくて、失ったものの大きさに呆然とする今の自分。
 そんな自分に決別する……

 春海! 春海!
 最後までおまえは、俺の心を氾濫させてぐちゃぐちゃにして、地に足がつかないような気分にさせるんだな……おまえらしいと言えばそうなのかもしれない。
 そんなおまえだから俺は、忘れたくないんだ。
 おまえに忘れられたくないんだ。
 もう一度会いたい。もう一度触れたい。
 名前を呼びたい、そして俺の名前を呼んでほしい。

 いるか、俺はおまえが好きだよ。
 どうしてかなんて、もう理由さえ分からなくなっちまった。だけど好きだ、どうしようもなく。こんなふうに、最後まで尋常じゃない騒ぎの中で消えてしまったおまえだから好きだ。

 おまえを知らなかった時代には二度と戻れない、それだけは確かだ。
 だから俺は追いかける――追いかけずにいられないじゃないか?
 今までの自分に別れを言って、明日からまた走り出そう。

 いつか必ず。
 いつかまた必ず会える。
 今度は俺がここから旅立つ、美しく懐かしい故郷をあとにして。
 おまえだって知ってるはずだろ? 俺が、こうと決めたことは必ず実行する人間だってことをさ。だから……だから……
 だからまた会えるんだ、俺たちは。
 約束するからもう泣かないでくれ。
 まだ、ほんの十五年しか生きていない俺たちだけど――何て言えばいいんだろう。人生なのか、運命なのか……その軌道が変わった音がおまえには聞こえなかったか?
 俺には聞こえたんだ、はっきりと。


……俺の毎日を変えてしまった女、如月いるか。
 夏はおまえを連れて行ってしまったけれど、このまま俺が何もせずに黙っているとは思うなよ。今でもまだ涙が止まらないけれど、俺は打ちのめされていないし――絶望もしちゃいない。

 夏が終わる。
 こんなにはっきりと、夏が終わっていく。
 倉鹿の夏の空は泣きたいほど眩しく青かった。
 その青い色は――俺たちの涙も叫び声も、最後のキスさえもすべて吸い込んで夏という季節の幕を引こうとしているように思えたんだよ。

 涙で霞んだ俺の目には。



















 素材提供:空に咲く花
 
 

 

● 初めてコメントします⭐
りりこ様
はじめまして。いるヨロに中学生のころはまっていて特に春海が大好きでした。りりこ様のブログに出会えて久しぶりにコミックを引っ張りだし再燃してます。この回のいるかが帰ってしまうシーンは切なくて当時は涙が出たものですが、りりこ様のかかれた春海の心情に中学生ながらに春海のいるかへの想いの強さが伝わって来て、ああ春海様はやっぱりすごい男子だ!と惚れ直し(笑)ました。特に「ほんの十五年しか生きていない俺たちだけど~ その軌道が変わった音がおまえには聞こえなかったか?俺には聞こえたんだ、はっきりと。」の所が好きです。倉鹿の情景も素敵でした。まだお邪魔したばかりで中学生シリーズしか見れてませんが、楽しみに拝読させていただきますA5zt
【 2017/11/06 00:13 】 NAME [すずきり] WEBLINK [] EDIT []
Re:初めてコメントします⭐
すずきり様、初めまして。
コメントありがとうございます。

 15の夏に関しては、決定版というものがなく思いつくまま何作も書き散らかしている状態ですが……
 あの時、春海は「何」を「見て」いたのだろうと私は思います。
 消えた電車か、軌道の行く先か。見えない何か、探したいもの、自分の意志で決める未来……あの情景を文章にしてしまうと野暮の一言なのですが、それでもあの時点で彼には「彼女が見えなくなった瞬間」に、「何かが見えた」はずだと思っています。
 子供でも、少年でも、分岐点は待ってくれない。「その時」が今だと、春海という人は幸か不幸かちゃんと悟ってしまったのでしょう。
 そういう感じ(どういう感じ?)で、同じような8/31ポエムをいくつも書いています。さすがにもう、これ以上は増えないと思いますが……

 中学生カテゴリーは数が少なく、今後の課題になっています。でも本当に、中学生時代に関しては原作だけで十分なのですね、私にとっては。……と言いながらも、隙間を捏造した話もあるにはあるので、お暇な時にでも読んで下されば幸いです。
 ありがとうございました。
【2017/11/06 23:47】
● お返事有り難うございます
りり子様
つたないコメントにも関わらず、御丁寧にお返事下さり有り難うございました。作者様からお返事がくるなんて…初めてのことで感激です⭐
りり子様の言われるように、春海にとっての分岐点のあの瞬間に、とっさにあの言葉が貰えたいるかって…なんて幸せなんだろう。未来への意志が伝わってきますね。
中学生時代の隙間話楽しいです!
余計に妄想が膨らんで(笑)
十分と言われず、作って頂けたら嬉しいです。

今後とも楽しみにしています
とりあえず御礼まで
有り難うございました
すずきり A5zt
【 2017/11/07 21:00 】 NAME [すずきり] WEBLINK [] EDIT []


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小林りり子
性別:
女性
自己紹介:
妄想を垂れ流す女。
当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

当ブログは、非公式の個人ブログです。
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