[24回]
如月いるか様
こんにちは。
毎回、同じことを書いている気がするけど――元気でやってますか。
先日、鹿鳴会について皆と話し合いました。
つまり……君が抜けたあとにもう一人、役員を増やすかどうかという議題でね。だけど実際の話、あれは議論などという代物じゃなかったな。
議論する前に結論が出て、三分もしないうちに終了したからね。
進も、一馬も、兵衛も――なぜか僕を見ながら――こう言った。
「俺たち四人だけじゃ仕事が手に負えないって訳でもないし、本来の選抜時期は四月なんだし、そのままでいいじゃないか」
僕も、確かにそうだと思った。
思ったけれど、建前だけでも理屈を言わなきゃいけないような気がして、僕は反対する言葉を口走ったらしい。
(自分では覚えていない)
そうしたら進が、心の底から呆れたような顔をした。あの顔は忘れられない……
「もういいから、黙ってろ。春海」
進はそう言ったんだ。
会長に向かって! 黙ってろ、だと!
「それじゃ、会議は終了。如月いるかの空席は――そうだな、永久欠番ってことで」
一馬もそう言いながらおれを……じゃない、僕を見ていた。
「会長、そういうことでいいな?」
まさか反対するはずがないよな、と言わんばかりの口調だった。
「そもそも鹿鳴会の会長は一人だけだ、普通はな。だけど、もう一人『会長』って呼ばれるやつがいたのも事実だろ。最後までおまえに負けなかったのは、あいつだけなんだから」
まったく、それは、正論極まりないことだった。
事実なんだ、確かに。
兵衛も重々しく言ったものだった。
「一応、銀子に聞いてはみたんだ。あらためて鹿鳴会に入る気はあるのかって」
兵衛が言うには、銀子は大笑いをしたそうだ。『今さらあたしが? 冗談じゃない、あたしは女子サッカー部だけで十分だよ。それに大体、春海がいるかの代わりなんか欲しがってもいないだろ』……って。
銀子の言葉には多少……いや、かなり訂正を入れたい気分にはなったんだけどね……
でも、まあ、皆がそこまで言うのだし――僕もこのままでいいと思うから、結局はそういうことにした。
鹿鳴会には二人の会長がいた、それを大事にしたかった。
(中略)
君も知ってると思うけれど、野球には欠番というものがある。
記憶に残る、忘れられない選手のためには永久欠番という栄誉がある。
もうひとりの会長のことを忘れたくない。
修学院のみんなが、そう望んでるんだ。
だから、卒業までは僕たち四人で何とかやっていくよ。
書記だの会計だのという実務については……まあ、大した支障はないよ。もっと正直に言えば、君がいても何もしてくれなかった訳だし……
(中略)
知ってるか?
永久欠番っていう言葉は、とんでもなく重いんだぞ。
野球をやる人間にとっては――いや。そんなことはこの際、関係ないな。
最後の最後まで僕と競って争って、そして負けなかった。
そんなとんでもないやつは、この三年間で君ひとりだけだった。
おまえって、本当に……
本当に……
会長・山本春海の名において、ここに謹んで贈呈する。
もうひとりの鹿鳴会会長、如月いるか殿へ。
君の居場所は、いつまでもここにある。