[14回]
春にはいつも、何かが起きるね。
出会ったのも春(本当は夏だったけど)、初めての……キスをしたのも春。
東京で、同じ高校に通い始めたのも春。
そして、今、あたしたちは約束をするんだね。
ずっといっしょだよ、っていう約束を。
嘘だあ、そんなこと信じられないって、十四歳のあたしが笑ってる。だってさ、春海はあたしのこと、軽い荷物みたいに、ひょいってつまんだよね。
いちばん気にしてることも言われたし、気に障るなあって思ってた。
でも今、目の前に立っている春海は、あたしと約束をする人。
制服とは違うスーツを着て、あたしを見てる。
あたしと同い年って思えないぐらい、大人に見えるよ……
春にはいつも何かが起きる。
出会ったのも春(本当は夏だったが)、初めて触れたのも春。
俺が上京したのも春。
そして今、また何かが起きようとしている。
新しい約束を交わす。
冗談だろう、女になんか見えないねって、十四歳の俺は笑うだろうか? 何しろ相手は、俺を投げ飛ばした女だからな。あんな小柄で、あり得ないだろう。普通は。
怖いもの知らずで、無謀な女。理屈の通じないやつ。
でも今、目の前に立っているのは、俺が約束をする相手。
見たことのない着物姿、慣れないんだよと言いたげな仕草。
結った髪――うなじに落ちる透ける髪。そうか、最近、髪を切らなかったのは、この日のためだったんだな……
春に咲く花のように。
ずっと待ちかねて、ようやく咲き初める花のように。
少年と少女は少しだけ、微笑みあった。
花が、ほら、今……
咲いた。
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お見合い当日の、脳内イメージ映像です。
あー、早くここまでたどり着きたい。
タイトルは、大和郡山市の桜を見た記念。