[23回]
殴られず、張り飛ばされず、蹴っ飛ばされず、噛みつかれない方法があれば、今すぐ自分のそばに引き寄せるのに。
――猛獣使いじゃあるまいし。
しかし、冗談抜きで、噛みつかれたり蹴飛ばされる可能性が高い。
彼の苦悩は深かった。
慣れない猫を手元に引き寄せて、撫でるだけでもいいのに。
いや、本当は、引き寄せてしまったが最後、我慢の限界が訪れるだろうと思う。
一度でいいから、気まぐれでいいから、そのやわらかいからだををこの胸にすり寄せてくれたらいいのに。
そうしたら、「怖がらないで」と言えるのに。
どうすればいいんだろう?
いつも青空の下で笑っている、あの幸せな少女を怯えさせず、傷つかせることもなく、どうやって想いを遂げることができるんだろう?
側にいるのに慣れてくれないのが、とりあえず困る。
不意に顔を近づけても、逃げる。
そうかと思えば、上目遣いで無意識に挑発してくる時もあって、男なんて結局、振り回されっぱなしの生き物なんだなと実感する……
怖がるな、と自信を持って言いたいところだが、情けないことに自分だってどこかで恐れている。
………………
本当は、殴られても噛みつかれてもいい。
おれは彼女に近づきたい。
いま以上に近くなりたい。