……ここはどこ、なのかな。
あたし、どうなっちゃたのかな? 旗はどこに行ったの?
ここ、どこ……?
嵐は……雨は……? 正美ちゃんは……?
目が覚めたら――青空になってて、太陽が出て、正美ちゃんが笑ってる。そうなってたら、いいのにな……
そう、あたし……きっと今、夢を見てるんだね。
正美ちゃんが元気に走ってる。嬉しそうに、楽しそうに。
よかったね、よかった。元気になってよかったね……
「――どうしましょうね、病室のベッドという訳にもいきませんし」
「とりあえず、着替えさせたら呼んでくれるかな」
「はい、春海ぼっちゃま」
「大丈夫なのかよ、あいつ」
「大丈夫だろ、一応ちゃんと診てもらったんだし」
「何と言うか……むちゃくちゃな奴」
「俺は慣れてるけどね」
「おまえはそうだろうよ。……俺も慣れなきゃ、この先とてもつきあえそうにねえな」
「――ぼっちゃま、終わりましたよ。どうしましょう?」
「ああ……じゃあ、ちょっと入らせてもらいます」
「おい、おまえ――」
「あら、まあ、春海ぼっちゃま……」
「病室空けてもらう訳にもいかないだろ。ロビーで寝かせとくよ」
「そうするしかないですわね。まあ、いるかさんったら……すっかり熟睡されて」
「……」
「おいおい、何だよそれ……見せつけんなよなあ。で、眠り姫をどうするってんだ?」
「どうもしねえよ。起きないんだから、寝かせとくしかないだろうが」
「寝かせるって……だから、どこに?」
「俺の膝に」
――ぼんやりと、光が差し込んでくる。
明るい。
今、何時? 夜は……嵐は過ぎてったんだろうか……?
聞こえてくるのは鳥の声、かな……?
朝が来たのかな……
もし本当に朝になってるなら、晴れてたらいいのに。
そうしたら笑って、みんなにおはようって言えるんだけどなあ……
おはよう……
おはよう……あれ? あれ?
あたし知ってるよ。この目……春海、ここにいるの? なんで?
ああ、すっごく優しい顔してるね……もっと近くで見せて、その笑いかた。
「――おはよう」
「……」
「やっと起きたか」
「……あれ……なんで……ここ、どこ……?」
「よく寝たか?」
「……春海? なんで? あたし……あっ、手術……! 手術は? 試合も!」
手術は成功したし、試合も勝ったと春海は小声でささやいた。
あたしは――どうやらあたしの枕は、春海の体らしかった――涙がじわっとにじんできて、嬉しくて起き上がった。
隣には巧巳もいて、もちろん嬉しそうなんだけど、何だか……妙に気まずそうな顔をしてあたしを……あたしと春海を見てた。
何でかな? 分からないけど……
でも、正美ちゃんが助かったんだ。手術は成功したんだ!
あれは夢じゃなかった。ああ、よかったね!
よかったね、よかったと巧巳に思わず抱きついたら、何秒かして春海があたしの服の端を強く引っ張った。
そして、自分の膝にあたしを戻してしまった。
[32回]