[9回]
困っちゃうな。
今まではあまり、こんなことはなかった気がする。少なくとも、あたしが気づいたのは――そう、あの家出のあとから。
さっきまで冗談を言って笑ってたと思ったら、次の瞬間、真顔になってあたしを見ている。
何も言わないんだもん。
真面目な顔で。
唇を引き結んだようにして。
そんなふうに、春海はあたしを見ている。
何が言いたいんだろう。
そして、あたしは春海に、何を感じて怯んだりしているんだろう?
そんなに見ないでって言いたいけど、なんでそんなに真面目な顔して見るの、って言いたいけど、言ってしまったら……どうなるの?
引き返せない気がする。
――どこに、引き返せないの?
――いったいどこに行くの、あたしは? あたしたちは……
春海。
何が言いたいのか、教えてよ。
そうやって、ずっと、黙り込んで、あたしに何を言おうとしてるの?
ねえ、春海。
あたしは考えなしの馬鹿だし、思いつきで行動して春海に迷惑ばっかりかけてるけど、それでも、それでもね……
春海以上に大事な人はいないんだよ……
春海がどこかに行くなら、あたしも行くよ。置いていかないでって約束してよ。
どこへ行きたいの?
そして、あたし。
あたしも……
春海に問われた時の答えを用意しなきゃいけない。
あたしは誰と――
どこへ行くのかを。