[7回]
春「さあ、書け。早く書け、今すぐ書け」
小「無茶を言わんでくれたまえよ、山本くん」
春「前夜をわざわざ二人別々の視点で書いておいて、その気の持たせ方は何だ? あとはもう当日を書くだけになったんだぞ。今まで延々とダラダラと、あることないこと綴りやがって……」
小「でもさあ、言っちゃ悪いけど私が重箱の隅をつつくような細かいことまで書いちゃった余波で、あなたは如月家に出入り自由になったんじゃん」
春「試練もあったから当たり前だと思うぞ。それぐらいの報いは……」
小「高1で彼女の両親に挨拶って――しかも結婚を前提に――確かに試練だったよね。だけどあれは完全に君の暴走。私はそこまで書くつもりはなかった」
春「俺の暴走? あんな状況に置かれたら、誰だって言わずにいられないだろうが」
小「そうやって律儀に筋を通すのって、すごく君らしいと思ったけどね。まあ、縁談に乗っちゃった以上、如月両親があそこで反対するのはあり得ないしな。あれはどちらかと言うと彼女へのけじめなんだろ、君にとっては」
春「それはそうだけど……あれが本番の求婚だと思われちゃ困る」
小「まあ、そこのあたりは心配しなくてもいいよ。見合いしたからって即、求婚だの結納になるわけないからね。これでやっと普通におつきあい期間になるんだよ。耐久の始まりだよ」
春「……あんたは、俺に試練を与えるのが生き甲斐だそうだからな」
小「まったくその通り」
春「……」
小「でも、森林限界まで行き着いたら天国に連れてってあげるよ。『それゆけパラダイス それゆけハネムーンベイビー』って感じかしらね。あと、『君のお花畑に飛び込んで』は外せないよね」
春「……(何を言っているのか意味不明)」
小「これはもう、実際書くかどうかは分からんのだけど……あなたの場合『ハネムーンベイビーどころじゃなくて当日ベイビーだろ?』」って、悪友たちにさんざんからかわれる場面が脳内にあってだな。しかしまあ、さすがに当日ベイビーとかネタだしね――いや可能性としては十分あり得るけどね――実際はもうちょっと長く二人だけの新婚さん生活を楽しんでもらおうと思ってるんだよ。あなたもその方がいいでしょ?」
春「俺はいつになっても『毎日が飢餓状態』なのかよ?……それはまあいいとして、じゃあ、見合い後のあいつはどうなんだ? ちょっとは俺を意識してくれるようになるのか?」
小「それは今後、お見合い後を(また)延々と細かく書いていかないと私にも分からないです。ただし、まあ一言だけ。好きな人のいる女は見かけがどんなに子供みたいでも、ほとんど全部気づいてるってものですよ。まして彼女はもう十七歳にもなろうとしてるわけで、『あたし子供だから、何もわかんないし気づいてもいないYO~☆』なんていうことだけは(予定には)ありません」
春「だったら余計に緊迫感が……そんな状態で二年間も……なのかよ!」
小「いやー、こればっかりは書いてみないと分かんないんだってば、マジで」
春「だったらまず、見合いを書け。今すぐ書け。冒頭に戻ったじゃないか!」
◇
ある意味、家出その後シリーズ中「一幕目のラストシーン」というべきお見合いイベントですから、いつもより数倍集中しないと書けない……
ラストシーンと言っても、特に
「若い二人の愛と青春! 感動! そして涙のエピローグ!」のような大仰な話にするつもりはありません。
いつものように普通に、自然に二人が動いてくれればそれが私の「お見合い」話です。
しかし、やはり、ひとつの大きな区切りではあるので大変です。
書くことに集中できる時間は一日の中でどうしても限られて来ますし、帝国ホテル周辺で桜を見られる場所はどこなのか、徒歩で行けるのか等、東京のことを何も知らない私としては「99%のフィクションを創るための1%の真実」を調べる必要があるわけです。
キーボードが実際に私の脳内と直結するまでは待ちの時間なので……
お兄ちゃんに急かされても、無理なものは無理なんですね。
ということで、気長にお待ち下さると嬉しいです。