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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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――もう、何が何だか分からない状況だった。

 さすが、姑息なことを考えるもんだ。
 こんな下らない報復しか考えられないっていうのが、まず、情けない。 吐き捨てたくなるほど小さい人間だ。

 憎むというより、みっともない、情けないとしか思わなかった。

 しかし、そんな姑息な手段に陥れられた体は、さっきまでの反撃が精一杯で、もう限界だった。
 これはもう本当にまずいと思ったが、記憶が途切れそうになった瞬間、誰かに抱きとめられた。

 聞き慣れた声がいくつも聞こえる。
……どうなってるんだ? これは幻聴か?

……ちょっと待て。
 何で、おまえらがここにいるんだ……?

 ◇

 兵衛に抱えられて、何とかゴール地点まで行くと、いるかがゴールするところだった。
 青空の下で、あいつはいつものように、前だけを見て駆ける。
 
 無事で良かった。
 あいつが無事なら、それでいいんだ。

 もし根津の手下があいつにまで手を出したら、と思うと怖気がした。

 よくやった、としか言えずに倒れそうになる。
 頭がぼうっとして(仕込まれた薬の上に、炎天下という状況なので無理もなかった)、そのまま気を失いそうになった時、いるかが叫ぶのが聞こえてきた。

 春海が好き、世界でいちばん好き!
 死んじゃいや!!

 いや……あのな……
 その言葉自体は……嬉しいよ。
 何だかんだ言って、おまえがこうもはっきり、好きだって言ってくれるのは……初めてじゃないか?

 でもな、おまえさ……
 そこにカメラとか、人がいっぱい並んでるじゃねえかよ……

 それ以上言うな、今は言うなよ。

 頼むから、そういうことは二人だけの時に言ってくれ……

「良かった、死んでなかった」
 と泣きじゃくるいるかに、
「勝手に殺すな!」と答えたことだけは……
 覚えている……
………………

 ◇

 気がついたら、やっぱりそこは混沌としていた。
 どういうメンツなんだ、一体。

 懐かしい顔。
 進、兵衛、一馬、銀子、杏子、それに日向と大川。
 いるかと同じ顔、けれどいるかじゃない……
 彼女とそっくりの従姉妹と、その幼なじみ。

……如月院長までいるのか? もしかして。
 里見理事長……その横はもしかして私中連会長?
 
 は? 親父もさっきまでここにいた、って?
 それは知らないぞ、聞いてない……

 入れ替わりにやって来たのは、傷を治療してもらって絆創膏と包帯だらけの巧巳(尤もその傷の半分ぐらいは、根津のやったことじゃないけどな)、陸上部の連中、女子サッカー部で生徒会役員の犬養、いるかのクラスの皆……

 おい、ここ病室だろ!
 人数多すぎるんだよ!

 巧巳も同じように病室で寝てなきゃいけないはずなのに、なんで俺だけ重病人みたいな扱いをされているんだ?

「おまえは特に、念入りにやられたんだよ」

 俺がそう問いかけると、巧巳は面白くもなさそうに答えた。

「根津にとっちゃ、おまえが恨みの張本人だからな」
「……下らねえ」
「まったくだ。でもな、おまえらの昔の仲間が来てくれなかったら、どうなってたか」
「……」

 俺は、巧巳を見上げた。
 薬の効き目はもう切れたらしいが、とにかく体が痛い。
 もちろん、半分は根津の報復だが、半分は理由が違う。
 もともと満身創痍だったのだ――俺と巧巳は。

「……いるかは、ちょっと待ってろ。ずっとここにいたけど、今ちょっとな、インタビューやら何やらで出てってる。まあ、登録もしていない選手が走った時点で、うちの優勝は幻だけどな」

 俺が誰を探しているのか、分かりきってるって顔しやがって……

 まあ、いいさ。
 俺は言いたいこと、言うべきことはもう昨日、すべて彼に言った。
 巧巳も本気で俺にぶつかってきた。
 だから、もういいんだ。

「しかし、おまえらの倉鹿のダチって、とんでもねえ奴らだよなあ……」

 巧巳が呟いたのと同時に、ドアが勢いよく開いた音がした。

「春海!」

 ずっと探していた声だ。

「春海! よかった……起きたんだね」
「……ということで、俺は退場な。待合室に倉鹿の連中がまだいるから、親交でも深めておくか」

 巧巳は俺にちょっと含み笑いを投げかけ、それから、いるかにも頷きかけて、病室を出て行った。

「春海……」
 ユニフォーム姿のいるかが、また泣きそうな顔で俺の枕元に屈み込んだ。
「春海……」
「……見ての通り、死んでないだろ。そんな声出すなよ」
「だって」
「……」

 俺は、いるかに手を伸ばした。
 いるかがすぐに、俺の手を取る。

「……おまえが無事で、よかった」
「……」
「泣くなって」
「だって……」

 いるかは、ふいに俺の手を強く握り、それから思わずと言ったように、その手に唇を寄せた。

「だって、こんなことになるなんて……」
「伊勢に感謝だな」
 俺は言った。
「まさか、俺たちより先に、倉鹿経由で根津の企みがバレてるとはなあ……」

 分かった時点で俺に連絡をして来いよ、とは思ったけどな。
 伝聞で確証がなかっただろうし、まあ仕方ないが。
 それにしたって、一同で上京してくるあたり本気すぎるだろ、あいつら。ついに、幻覚を見るまで朦朧としてきたのか、と思ったもんだ。
 おまけに、如月院長まで引き込んで……

「進たちと話したか?」
「うん。……驚いた。まさか、進が走ってくるなんてね」
「まあ、ルール違反ではあるな」
「そうだね。でも、あたしが……里見が一番でゴールしたことは変わらないよ」
「……おまえに勝てる奴なんか、いないよな」

 それは、俺がいちばんよく分かってる。
 おまえはいつも、全力で走る。
 理屈を跳ね飛ばすように、その小さな体の全力で。
 その姿が皆を引きつける。胸を打つ。

「いるか」
「うん?」
 俺は、握っていた手を動かし、いるかの頬に触れた。
「さっき、俺に言ったこと――」
「……あ、あれは……」
 いるかが赤くなり、ごまかすように照れ笑いして、最後にはうつむいてしまった。
「だって……だってね」

 春海が今朝……言ってくれたから、だからあたしも言わなきゃって思ったんだよ……と呟いて、俺の寝ているそばに、顔を寄せてきた。

「あたし、ほんとバカだよね。へへ……」
「……って言うか、ああいうことは、俺だけに言えばいいんだよ」
「……うん」
「……」
「好き……春海」
「……」

 一昨日だったか(まだたった二日前のことなのか!)、海辺で見たくもない光景を見てしまって――そこから今日の明け方までほとんど、こいつのことしか考えていなかった。

 こいつに、俺の気持ちを伝えるまでは眠れなかった。
 巧巳と殴り合っている時も、あの光景が消えなかった。
 
 俺だけの小さなくちびるが、他の誰かに奪われてしまった。
 もちろん、いるかのせいじゃない。

 巧巳がいるかに魅かれるのも、分からない訳じゃない。
 客観的に考えたら――当たり前かもしれなかった。
 そいつと出会ったことで自分が変わる、変わったことを自覚しているのなら、特別に思うことは当たり前かもしれない。

 俺がいちばん、身をもって知っていることだ。

 あそこで自制できたのは、ほとんど奇跡としか言いようがない。
 と言っても、実は自制しようと思って自制した訳じゃないんだ。情けない話だが、ただ動けなかっただけだ。

 先に行き過ぎて、後ろを振り返ったら、巧巳といるかが砂浜でのんびり座ってしまっているじゃないか。
 休憩してるのか、と思ってあいつらに近づくのと同時だった。巧巳がいるかの髪に触れ、何か囁きかけ、いるかの唇に……

 あんなものを見てしまったせいで、いるかに気を遣うことも出来なかった自分が嫌になった。
 けれど、そんな余裕がなかったのも事実だ。

 ああ、思い出したくない。 
 人間、本当に衝撃を受けると、一瞬だけど体が固まるんだよな……

「あたし……春海が好きだからね」

 そう言ってくれると、俺もこの数日の疲れがふっ飛ぶよ。
 本当に、そう思う。
 おまえのその言葉だけで、もう十分だ。
 それ以外は何もいらないんだ。

「……うん」

――それならもう、絶対にこれは俺一人のものなんだよな? そう思ってもいいんだよな?
 そう思って、いるかのくちびるに指で触れた。
 今朝も触れた、そのくちびる……

「これ、くれよ」
「……」

 里見に入学して、まだ半年にもならない。
 春からずっと、怒涛のように過ぎてしまった。

 まあ、これで旧体制の後片付けは終わったと思ってもいいのかな。

 それなら、今日ぐらいは、すべてを暑さと悪人のせいにしてもいいか? 今日だけは、彼女の顔だけを見つめていよう。
 それぐらいは、許されるだろう。

 9月が来れば、また喧騒の日々になるのだから。
 そう、今日ぐらいは……

 いるかの顔が近づいてきた。

……そう言えば、これで、二年連続なのか。
 去年も、そして今年もまた、夏の終わる頃に気持ちを確かめ合った俺たちだった。

 *****

 これでほっとしたのもつかの間……
 秋~冬になって彼女は家出してしまいましたとさ。

 春海、落ち着く暇がないなあ……

 ※2012.7/19 加筆訂正




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小林りり子
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自己紹介:
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当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

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