[11回]
「……眠い」
机に突っ伏した副会長が呟いたのを、生徒会長は聞き逃さなかった。
「寝るな」
「退屈なんだもん」
「おまえ、副会長だろ。たまには仕事しろ」
「ほんとに眠い。……おやすみ」
「寝るなっつってんだろ。――よし、分かった」
春海はため息をつき、それから良いことを思いついたような声で言った。
「本当に寝たら、こうするぞ」
いるかが、危険を察知した動物のように顔を上げた。案の定、春海の端正な顔が間近にあった。
「……!」
「何だ、起きてんじゃないか」
「まだ寝てないよ!」
「つまらねえ。悪戯してやろうと思ったのに」
「……ここ、生徒会室だよ。春海……」
生徒会長は悪魔のような笑顔になり、何も言わずに副会長の顎に手をかけた。
「ちゃんと起きたな?」
「……あのね。そんな近くに顔があって、どうやって眠れるわけ?」
「いい子だな」
言葉が途切れて、沈黙。
しばらくして、恐らく副会長がまた机に突っ伏したらしい音が聞こえてきた。
ドアの向こうで、面白がりつつうんざりしている顔がふたつ。
「公私混同しないのが信念ってね。あれのどこが……?」
「そう言ってやるな。これぐらい大目に見てやらないと、あいつもあれで必死なんだよ……」
「何と言うか……男って面倒くさいねえ」
「今日は曽我部先輩と、はとこ殿が来ない日で良かったぜ」
玉子と巧巳が小さな声で言い合う。
「この際、『起こさないで』ってドアに貼っとかないとな」
「ああ、ホテルのドアノブに引っかかってるやつね……やれやれ……」
生徒会長が見守るそばで、副会長は穏やかに眠っている。
その平和な寝顔に、一年生の生徒会長は思わず二度目のため息をついていた。
「仕事しろって、言ってんのに」