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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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 授業と授業の間、廊下で出会って進が手を振る。
「いるか、昨日はサンキューな。団子うまかったぜ」
「ほんと? よかったあ!」
「いや、なかなか大したもんだった。叔母さんにもよろしくな」
「うん。また来てね!」
 音楽室へ移動しながら、春海の唇がかすかに動いている。何かを問いかけたいらしいが、言葉には表れない。
「ピアノはぁ、いくら頑張っても絶対あたしには無理。だめだめ」
「……進が、何だって?」
「え?」
「進が……団子?」
「うん、そうそう。昨日ね、進がうちの前通りかかって声掛けてくれたんで、お茶飲んでってよって誘ったの」
「……あ、そういうこと」
「うん、そういうこと。――ピアノも、リコーダーもだめだめ……」
 調子っぱずれの鼻歌が、春海の勘に障った。しかし何も言えなかった。


「よう、いるか。昨日はご馳走さん。手作り水羊羹、すげえうまかった」
 また違う日、今度は一馬と兵衛が鹿鳴会本部で言い出す。会長の、書類をめくる手が一旦止まった。
「あ、ほんと? おばちゃんすごく喜ぶよ」
「おまえの叔母さん、料理上手だよなあ。しかもあんな美人でさ」
「だよなあ。すげえ若く見えるし」
「それ、おばちゃんの前では言わないでよ! みんな」
 進も割り込んできて、和気藹々と会話が弾む。
 山のような書類を破りたい衝動にでも駆られたのか、会長が突然席を立って本部を出て行った。残された四人は唖然としたが、いるかの「春海って、最近なんかあったの?」という言葉をきっかけに彼の性格について盛り上がる始末だった。進だけは少々、含みのある顔つきで笑っていたが。


 よく分からない。
 この感情が分からない。この思いの名が分からない。
 目を閉じると、桜の花が舞い踊る。雲ひとつない青空、太陽。校庭に、教室に、グラウンドに響く歓声。翻るセーラー服のスカート。紅葉の浴衣……少女の膚。
 そして芙蓉……記憶の海に沈んでいた、過去の花びら。
 考えても分からないことは除外するとして、公平さに欠けるのではないかと彼は思う。彼女の家なら、自分だとて何度も通りかかる……いや、もてなしの期待など最初からしていない。菓子が欲しい訳でもない。
 では、今、自分はなぜ腹を立てているのだろう?
 気分を害しているのだろう? 聞きわけのない子どものように。

 当分、如月邸の前は――意地でも――通らないようにしよう。彼はそう誓った。



「あ、春海! どしたの、買い物の帰り? 時間ある? お茶飲んでかない? ちょうど三時だし」
 誰にでも、そういうふうに親しみを込めて誘うのだろうか。満面の笑顔で、屈託もなく。
 結局、誰にでも――の中のひとり。特別ではない。
 "One of them"
 英語ではこう言うのだ。
「あのねえ」
 上目遣いで笑うなよ。
 特別な誰かを見るように、誘うように笑うなよ。どうせ自分は、その他大勢のひとりなのだろう?
「よかった、通りかかってくれて。ほんとなら、春海ん家まで――徹くんもいっしょに、お菓子食べに来てって、行こうと思ってたんだ。今日ね、おばちゃんに習ってちょっとだけあたし、お菓子作ったから……あ、でも、仕上げは全部おばちゃんがしてくれたんだけど。栗の入ったおもち! 秋っぽいでしょ? こないだから少しずつ、おばちゃんに習ってたんだけどさあ。今のあたしじゃ、最初と最後はおばちゃん任せだから『作った』ってことになんなくって……でも、今日のはとくべつ、おいしい……と思うよ。栗いっぱいで、黒いお砂糖のやわらかいおもち。進たちも呼ぼっか? あ、博美と湊も……」
「そんな、大げさなことにしなくてもいいだろ。いくつ菓子があっても足りねえぞ。――それから、徹は友だちと遊びに行ってるぜ」
「なんだ、残念。じゃあ、春海は? 春海だけでも食べてってくれる?」
「…………」
 つまりは毒見係の"One of them"なのか、それとも『特別』な待遇なのだろうか。やはり、よく分からない。この少女の笑顔は何もかも分からなくさせる。
 いつか、知ることになるだろうか。
 長くもない一生の中で、『その時』は避けて通れない。逃げられない――そんな予感が、彼にはした。
 この心の名は、何なのか。
「――じゃあ、せっかくだから、ご馳走になるかな」
「うん、入って入って。徹くんの分、持って帰ってね。あ、藍おばさんの分もね」
「あいつ、喜ぶよ。お邪魔します」
「よかったあ、春海が来てくれて。改まって、あそびにきてね、なんて言うのって……ちょっとはずかしかったんだ……」
 如月邸の長い廊下を歩く小さな背中が、肩が、甘い罠のように揺れた。それで少年は、もうすっかり怒りを忘れ果てて騙される。笑顔に触れると、笑顔しか返せなくなる。
「……進たちには、この餅じゃなかったのか? 団子とか言ってたな」
「うん、そう。進たちの時は、おばちゃんがちょうど外に出ててさ。無理やり引き込んじゃって。進なんか、時間がないって言うのに、ほんと無理やり……どしたの? 春海。なんか、顔が……笑ってるよ?」



 もう、とうの昔に答えを見出していた気がする。
 彼女にとって自分が『特別』でなければ傷つくほどに、もう、深い場所に沈んでしまっている気がして――おいしい? と問いかける彼女に、彼は笑いかけた。

 この直感は外れない。
 正解を知っているのは、他の誰でもなく彼自身なのだから。































 *****


 中2の二学期になってすぐ……ぐらいの時期かな。
 でも本当は、原作だと割とすぐ杏子が転校してくるはずなんですが。
 ま、いいか。

 以前、伝言板かどこかで「中学時代の小ネタがある」と書いたかもしれませんが、その二作品は「都忘れ」とこの話……鹿鳴会連中に嫉妬ネタでした。
 そして「都忘れ」は、最初のイメージでは紫陽花だったのでした。

 あとひとつ、女子サッカー編の直後あたりに進が春海に「俺、最近いるかが気になってさ。つい目が行っちまうんだよな」とか何とかカマシをかけるネタもあるのですが、しかし、女子サッカー編ラストではあんなに(二人の仲直りに)協力的で解説役までしてくれた進が、もうほとんど二人の気持ちを理解した上でそういうことをするかなあ?……というジレンマもあります。

 進は優しいし、親友である春海のことが大事だと思うので(&いるかと春海がセットで好きなんだとも私は思う)、何と言うのかな……決定的な恋敵にはなり得ないんですよね。

 口では「おまえはライバルだしな」と言っていたけれど、あれは嫉妬のあまり意固地になっとるバカ春海をけしかける為であって、本気で競うつもりではなかったはず。
 なぜなら、いるかの気持ちが自分に向いていないのを進は分かっている訳だから。

 だからこそ、春海がより危機感を覚える相手として、巧巳という存在が生まれたのかもしれんのよな。
 いるかを本気で争う相手として。
 私は割と真剣にそう思っています。

 ただ当時は、なぜ三角関係を(高校編でも)リピートするの? しなきゃいけないの? とも思っておりました。
 恐らくは、進との修羅場が読者受けしたんだろうな、だからリピートなんだろうな(顔もほぼ同じだもんなあ……)とも推測しましたよ、ガキのくせにね。
 子供なりに分析していましたよ。
 



 ※遊びにきてね/PSY・S(歌詞はほぼ無関係)
 
 
 
 




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小林りり子
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女性
自己紹介:
妄想を垂れ流す女。
当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

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