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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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 春になれば約束をする。
 春になれば、彼女はやっと……

 四月になれば、彼女は俺の……

 ◇

 男も女も落ち着かない日、2月14日。
 ただし、与える側の女は、落ち着かないと言っても優位な立場にいるのだから、まだいい。
 与えられるのを待つだけの男は、たまったもんじゃない。
 こんな日を作ってしまったのは誰だ。世の男たちは、そいつを訴えてもいいと思う。
 どうして男だけが、たかが菓子商戦のためにこんな切ない思いをしなくちゃいけないんだ?
 これはもう立派な、精神的苦痛だ……

 世の中には、誰かが苦痛を受ける日に、至福の喜びを味わう男もいる。有難くも俺は後者の中に入っており、この数年は当日になると落ち着かない。もらえると分かっていても落ち着かない。
 合図を待って、合図を探して、結局は俺より落ち着かない彼女に笑いながら催促する羽目になる。
 こういう男を、世間ではもしかして馬鹿と言うのかもしれない……

 一年生でいるのも、もうあと少し。
 春になれば二年生になり、次の役員選挙の結果がどうなるかは知らないが、このままだと俺はやっぱり生徒会長を続けることになりそうだ。
 いるかは、副会長としての仕事なんてほとんどまともにやっちゃいないが、校内での信任は篤い。
 部活だけでも忙しくなるんだぜ、二年になったら、と巧巳は言うが、そういう巧巳も敢えて「今度は立候補しねえよ」とは言わない。――まあ、どうせ去年の選挙も巧巳にとっちゃ騙し討ちみたいなもんだったから、今さら地道な選挙活動をしようとも思わないのだろう。

 そんな訳で、来年も似たような環境で、同じようなメンツで過ごすことがほぼ確定している中、俺といるかにとっては、次に来る春は大きな意味を持つ――ことになるはずだ。

 細かい経緯はここでは省略して、とりあえず結論だけを述べる。俺といるかは、山本・如月両家の合意のもとで見合いをする。
 だから現在、俺といるかは「半分は婚約者」とでも言うべき関係にある。自分の人生がこんなに早く廻り始めるとは思いもしなかったが、置き手紙一通を残してふっと消えるような相手じゃ、出来るだけ早く約束をしないとこっちの身が持たないじゃないか。
 
 早くつかまえないと、俺が落ち着かないんだよ。

 入学当初こそ「新顔組」と揶揄されて、無視されたり軽んじられていたいるかだが、今ではもうすっかり、元気で飛び跳ねっぱなしの「如月副会長」だ。
 いつかどこかで見た話だけど、めちゃくちゃでも理屈が通っていなくてもあいつは行動して、それが皆を変えていく。
 天性なのか、それとも何も考えていないのか。俺に分かるのは、そういうあいつに、いつの間にか魅かれる奴もいるってことだけだ。――俺と同じように。
 
 俺は、そんな彼女の恩恵を受けた男で、そして、それはこの世で俺ひとりであってほしいと思う。今までも、これから先もずっと。
 身勝手な願いなのは、分かってる。
 巧巳がいるかに魅かれる理由は、俺がいちばん理解できるんだ。だから、去年の夏にはなかなか凄まじい殴り合いもしたもんだが、俺と巧巳はどこかで感情を共有している部分がある。

 巧巳はあの時、笑っていた。
 俺に殴られ、俺を殴りながら最後には笑っていた。

(おまえって本当はこんな、めちゃくちゃな男だったのか。もう分かった、分かったから落ち着け。――よく聞けよ、春海。俺はもう『分かった』んだよ)

 俺は多分、運が良かっただけなのかもしれない。
 巧巳より先にいるかと出会っていた。
 差はそれだけなのかもしれない……

 俺は力づくで巧巳を――いるかに近づこうとする男をねじ伏せたけれども、もしも、力が及ばなかった場合はどうなるんだろう。
 他の男があいつを手に入れて、あいつがその男に笑いかけるのを、ただ黙って見ているしかないんだろうか。
 この焦燥感は、いるかを信じている、信じていない、というのとは別の話なんだ。――でも多分、いるかに言ったら怒り狂うかもしれないので、言わない。

 あたしを信じてないの?
 春海のこと、好きだって言ったじゃん!
 あたしと春海は、だって、もうすぐ、もうすぐ……約束するんでしょ?
 とか、あいつにそんなふうに問われたら、もちろん信じてる、俺も好きだ、もうすぐ約束するんだと返事をするだろう。
 だけど心に残ったままの切迫感、追い詰められるような息苦しさ。
 これを説明する自信がない。

……大学に行ったら心理学をやるのもいいな、などと、こういう時に思ったるする。だけど、修めた心理学の、その形どおりの方程式を自分といるかに当てはめることも出来なさそうだ。
 自分自身では、物事の筋や理論というものをかなり重んじる性格だとは思っているが、いるかに関してはそれが適用できない傾向にある。そういう自覚だけはある。

 こんなことを延々と考えてしまうのも、今日がいつもと違う日で、一年に一回、男たちの精神を極限まで追い詰める日だからなのかもしれない。

 ◇

 朝、待ち合わせて登校。
 いつもと同じ。
 だけど、やっぱり、いるかの顔はちょっとぎこちない。俺を見ては笑うけど、何かをずっと気にしているような表情を見せる。
 その鞄に入ってるものを、さっさと渡してしまえば楽になれるのに、と男はどこまでも自分勝手なことを思う……

 そして校内では……
 中学時代もまったく同じ光景が繰り広げられたものだ。
 別に俺だけじゃなくて、それぞれ実力があって人望がある仲間が揃っていると、こうなるんだよな。

 犬養はもともと中等部から女子サッカー部の花形だったということだし、そのサッカー部キャプテンである加納先輩が、女子から妙な人気があるのも頷ける。
 巧巳だってあれで野球部の4番(3番のこともある)バッターだし、性格が少しぐらい斜めがかっていたところで……いや、まあ、巧巳のことはいい。

 いるかは生徒会室に山積みになった菓子に驚いて、俺の気持ちも知らないで、
「わあ、春海ってばすごい。修学院の時より多い」
 とか、
「あたしのも結構多いなあ。食べきれるかなあ?」
 とか、まあ実に……無邪気なことを言っている。

 おまえは知らないんだろうな。
 おまえ宛の山積みチョコレートの中に、女じゃなくて男からのが……あったとしたら……なんて、俺が思っているのを。

 自分宛の山積みなんて、まったくどうでもいいし目に入らない。
 向こうが送ってくるものを拒否する術もないし、正直なところいちいち口にするのも面倒だし……薄情な言い草だが、俺にとっては10個だろうと100個だろうと、それはつまり、単なる箱でしかないんだ。
 ただの物体でしかない。

 いるかがさっきから、俺と自分への贈り物の量に大げさに驚いているのも、多少は気持ちが上滑りしているってのもあるんだろう。
 いるかはいるかで、何も考えていないって訳でもない。
 無邪気に見えるけど、内心ではきっと、色々と考えてもいるだろう。いつ渡せばいいんだろうとか、どこで渡せばいいんだろうとか。

 頬杖をついたまま、また俺は、自分のことを笑った。

――馬鹿だよ、おまえは。山本春海。
 本当に、馬鹿だよな。
 そんなに待ちかねてるのか。
 今すぐに欲しいのか? 

 ああ、そうだよ。俺は待ってる。
 俺は知ってるけどさ、あいつが俺のことを好きでいてくれるってことを。でも、なかなか言葉にしてくれないから、一年に一回ぐらいは待ってもいいと思ってるんだ。
 最後の瞬間を待ちかねて、焦がれるのも悪くない。
――そう。本当は、そんなに悪い気分でもないんだぜ。

 ◇

 そして、放課後。

 いるかの歩き方が明らかにおかしい。
 ロボットみたいに、とまでは言わないが、ぎくしゃくとしていて、見るからに緊張していて、おかしい。

 いるかが、自分からはなかなかきっかけも掴めず、言い出せないことも分かっている俺が、いつまでも黙って観察しているのは気の毒だ。

「今から家に来る?」
「えっ……」

 いるかは絶句する。
 まあ、俺の家には徹も藍おばさんもいるから、二人きりでチョコレートっていう場面には不向きだよな。
 家ってのは名目だけだよ。そんな驚かなくても。
 駅から家への途中に、公園とか子供の遊び場とか、あるだろ。

「え、あの……それでもいいけど……」
「今日ってさ、何の日だったっけ」
「えっ……」
「……」
「今日……今日は、だから、その」
「うん」
「は……春海に……」
「うん?」

 もう少しだけ、がんばれ。
 言葉にできるのなら、してほしいから。
 意地悪でやってんじゃない、俺が聞きたいから。

「春海に……チョコ……」

 そこまで言って、恥ずかしそうに言葉が小さくなる。

「また失敗しちゃったからさ、あの……あげるの恥ずかしくてさ……」
「で、もらえるまであと何時間かかる?」
「な、何時間って……春海、いじわるだね」

 恨めしそうに言ういるかの手を引っ張って、俺は少し下校ルートを外れて歩き出す。そこに、ちょっとした公園というか広場みたいなものがあるのを知っているからだ。
 まあ、この分だと俺の家まで行く必要もないだろう。

「春海、ほんとに、あたし失敗しちゃったから、あの……」
「そんなこと、どうでもいい」
「何と言うか……じっくり見られるのが恥ずかしいんだって……ねえ……わ、渡すだけでいいよね? 中身開けないでいいよね?」
「とんでもない。ちゃんと味見させていただくよ」
「あ……あじ……」

 また絶句して、いるかはもう何も言わなくなった。
 寒々しい枝を広げる木のそばの、木目のベンチがあったので、そこに腰掛けた。
 そうして俺は、目の前に立ついるかを見た。
 
 俺が、もらえるのは当然って顔してると思ってるだろ?
 早く出せって図々しく催促してると思ってんだろ。
 そうじゃないんだよ。
 おまえと同じで、俺だって、必死なんだ。

「……」

 いるかは、はあっと盛大なため息をつき、鞄から何かを――何なのかは分かりきっているのだが――取り出した。

「……形もだけど、味も保証できないよ」
 そう呟いて、いるかは俺に、小さな包みを差し出した。
 ピンクのリボンで飾られた、茶色の小さな箱。
 両手を重ねたてのひらの上に。

「……春海に、あげる」
「……」
「……あ、これってちょっと偉そうな言い方? えっと、じゃあ……失敗したけど、きれいじゃないけど、春海にあげたいの。だから、これ、もらってくださ……」

 立ち上がるのと、箱を奪うのと、抱きすくめるのを同時に行ったせいで、いるかは声にならないほど驚いたようだった。
 いるかの鞄が、手から落ちた。

「……!……!」
「ありがとう」
「……!」
 あまりにきつく抱きしめたせいで、いるかは何も言えずに俺の胸を叩こうとする。
「――もう、春海っ!」
 やっとそれだけ言って、勢いよく俺を見上げるので、そのままキスをした。いるかの唇は嫌がっていなかった。
 それを幸いとばかりに、俺は一回でやめなかった。
 そのうち、長すぎるとばかりに訝しげに眉を寄せたいるかが、声を洩らし始める。
 今の俺にとっては、チョコレートよりもはるかに甘い声……
「ん……んっ……!」
「……」
「んん……!」
 苦しいよ、と言外に叫んでいるのがよく分かる。
 笑いたくなったが、笑わない。笑うなんてとんでもない。いつか俺が考えていたこと、それを実践するにはいい日だから。

「ん……」

 ああ。
 体が痺れてしまう。
 心も疼いてしまう。
 気が狂ってしまいそうで、それを何とか抑えることに俺はいつも必死だ。こんな日でさえも、俺はまだ……
 俺は、本当は、もっと……

「ありがとう、いるか」
「……」
 怒られるかなと少し思ったが、いるかはぼうっとした目で、俺を見た。
「……」
「……ありがとう」
「……うん……」
 やっとそれだけ言うと、いるかは自分から俺の胸に顔を隠してしまった。ここで開けないで、中身を見ないでと囁いている。
 何度も見ないでと言われたら、まあ普通は見たくなるのが人間ってものだ。
 俺はリボンを解いて、中を見た。
「…………」
 いるかが真っ赤になる。
 すぐに目に入ったのは、チョコレートの上に置かれたカード……
 俺は、また彼女を抱きしめた。そろそろ陽も落ちようとする時間で、暗くなってきたのもちょうど良かった……

「ずっと待ってて良かった。――ありがとうな、いるか」
「……春海、さっきからありがとうしか言ってないよ」
 いるかは赤い頬のまま、やっといるからしい笑顔に戻って笑った。
「まだ、味がどんなのか食べてもないのにさ……」
「食べなくても、うまいって分かってんだよ」
「ミルク入れすぎちゃって、チョコもどんどん足してったら焦げちゃったんだよ。ねえ、聞いてんの?」
「聞いてるよ。そんなに心配なら、今すぐ味見するか?」
「……もういいよ!」

 与える女、待つ男。二人とも大仕事を終えて、ほっとして口が軽くなる。
 笑顔も自然な表情に戻っていく。

 待つのは辛い。
 でも、待つしかない。彼女が与えてくれるまで。辛さよりも喜びが勝ることを知っているから。
 それは今日のような日でも、昨日や明日でも同じことだ。約束をしてもしなくても、大事だということは同じなんだ。

 何度確かめても足りなくて、それに、もともと自分からは――なかなか――言おうとしないいるかだから、一年に一回、こういう日があっても悪くない……

『Happy Valentine』 

 今日は、カードに書かれた彼女の思いを味わおう。何度も何度も。
 たどたどしい文字の、定型通りの英文と――俺の本当に欲しかった一言を。

『春海へ。大好き』

 

 

 

 *****

 家出後~正式に見合いをするまで、私の脳内では「四月になれば彼女は」というシリーズになっています。
(あと「踏破」「シグナル」とか、この時期は色々とシリーズが交じり合っている状態……)

 自分メモ整理
 7巻直後~見合いまでが
「四月になれば彼女は」

 見合い後~高校3年あたりまで
「踏破」とか「遠雷」とか

 見合い後、ときどき春海暴走シリーズが
「シグナル」……なのかなあ……?

 I can wait no more
 

 まあ、秋頃~冬に縁談が起きて家出、問題解決となったら、実際に見合いをするのはいつ頃かってのは誰しも考えることですね。
 で、まあ私は割と常識的に「秋~初冬に家出したとしたら、冬休みあたりはまだ早すぎる。両家だけでなく外務大臣なんて人が絡むなら余計、じっくりセッティングされるべき場だろうし。ということは、まあ、早くて高2になる前の春休みあたりじゃないのかな」という感じです。

 やっぱり、この二人には(何かが起きるとしたら)初春が似合うと思うしね。
 ただし今回のは、時事ネタを書きたいがための単発ものです。

 作中では、悶絶する少年シリーズ「I'm still in the cage」の中の、

「今の俺にはキスしかできないから、この先もこんな生き地獄のままなら、キスに関してだけは技術向上するかもしれない。まあ、こいつが向上していると認めてくれるかどうかは怪しいが……」

 というモノローグを引用しました。
 これが春海の言う「いつか俺が考えていたこと」です。

 だけどね、少年。
 長い長いキスは、結構あからさまに欲望を伝えてしまうものなのよ……しかもあなた、下校途中の公園だなんて。
 まあ大胆な……




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HN:
小林りり子
性別:
女性
自己紹介:
妄想を垂れ流す女。
当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

当ブログは、非公式の個人ブログです。
集英社ならびに浦川まさる先生とは一切関係ありません。
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当ブログは妄想と捏造の遊び場です。
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