また少しだけ、真顔で見つめられる。
笑いたいけど、笑えない。
好きだと言っても言葉だけじゃ追いつかないときがある。そんなとき、男の子と女の子はキスをするのかな。
春海を見上げて、目を閉じる。
たまりかねたような勢いで、押し付けられるくちびるが熱い。
手を握って。
指を探って。
ふいに吐息。
手と手が離れない。
春海は目を閉じたままのあたしを見つめ、あたしは、何かを待っているかのような春海の、瞼を閉じた顔を見つめる。
すれ違う目と目。
二人でいるのに、迷子になったよう。
空は明るいのに、雨雲が広がったよう。
◇
目を閉じて、俺を見上げるその顔に吸い込まれた。
怖がらせたくないから、深呼吸をしてから口を塞ぐ。出来得る限りゆっくりと、優しく。
そうしないと、俺自身も息ができなくなるから。
このまま嵐になればいいのに、と勝手な夢を見て、腕の中の小さな熱を抱きしめる。
いるかが震えている。
寒くてたまらないかのように、揺らぐ。それを抱きしめても震えが止まらない。
肩をそっと抱いて。
合図を探す。
ふいに、ため息。
心が重ならない。
俺は、待つと決めたけれど。
二人でいるのに、信号が邪魔をする。
空は眩しいのに、雨を運んでくる。
[10回]