[13回]
暗がりでキス。
世界から隠れてキス。
夜が、二人の姿を消してくれたらいいのに。
(こうして側にいるのに、どうして離れなくちゃだめなの?)
(こうして抱きしめているのに、どうして帰さなくちゃだめなんだ?)
切れそうで切れない尖った線上を、ときどきバランスを崩しながら渡る彼と彼女。
まるで、剣の切っ先で突かれているように痛む。
棘を無理やり飲み込んでいるような痛みが続く。
危うく脆い一線を渡る足先はずきずきと痛み続け、つないだ手も熱くて痛い。
(誰もいない場所なんて見つからないね)
(誰にも見られない場所に閉じ込めておきたいんだ)
恋する時間は、ほんの一瞬。
彼と彼女に許された時間はわずか一瞬。
名残惜しく、彼の手を離そうとする彼女を引き止める。
彼の目線にはいつも、彼女の髪が見えている。
背の高い彼が小さな彼女を見下ろせば、いつもそこには小さな、ふわふわとした髪の毛が見える。
彼女はゆっくり手をつなぎ合わせて、照れたように笑った。
あどけない声で。
好き。
彼女の声が、彼女を守るラインを危うくさせる。
彼はそれでも踏み外さない。
踏み外せない。
熱を抱いたままの彼と彼女が見上げるのは、銀色に光る月。
あれがある限り、夜は自分たちを隠してくれない。
http://www.youtube.com/watch?v=CFasoemdEag