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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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――舞台が終わったあと、喧騒の楽屋から呼び出されて廊下に出た。
 そこに但馬館の平賀会長がいた。
「あの、山本会長……平賀さんに、ぜひ会長を呼んでほしいって言われたんで」
 舞台スタッフを務める二年生が恐々と言いかける。
「ああ」
 俺は頷いた。
「ありがとう。俺も、舞台が終わったら彼と話したいって思ってたから」
 スタッフはほっとしたらしく、小走りに駆けていった。まだ着替えもしていないが、こういうことは思い立ったら即、行動に移すべきだ。
 こんな日だから……
 今日は本当に騒々しい日だったから、何が起こっても不思議じゃない。

「……最後まで見たのか? 舞台」
「ふふ。実に感動的だったよ、特にラストシーンがね」
「……」
 マリア、あるいはいるかのアドリブのことを指しているんだろう。平賀は眼鏡の蔓を上げながら、俺に笑いかけた。
「ああいう相棒じゃ、君の手に負えなくても無理はないな」
「……」
「今日は、うちの連中が申し訳ないことをした。生徒会長として謝らせてほしい」
 平賀は――こういうところが会長として人望があるのだろうな、と思わせる――憎い仇のはずの俺に、頭を下げた。
 いつもは何かと張り合い、お互いを目の仇にする修学院と但馬館の生徒会長同士だった。会うたびに嫌味の応酬が当たり前だったし……去年、女子サッカー部問題のことで俺が直談判に行った以来だったか、二人だけで話すのも。
「ライバル同士だと言ったって、今日のことはやり過ぎだ。逸脱行為だよ」
「……」
「人質を取って如月くんを誘き出したって言うんだからな。悪気がなかったでは済まされん」
「今日のことは、但馬だけじゃなくてこっちにも問題があったんだ。だけど何とか収まった訳だし、できるなら穏便に事を運んでほしい。修学院の方でもそうするつもりだ」
「――」
 平賀は俺を見た。
「以前は、いかにもエリート然として態度も言葉も棘だらけだったのにな。山本」
「……」
「それが今じゃ、あのどうしようもない連中のことまで考えてくれるのか? 駆け込んできた時のおまえは恐ろしかったぞ、鬼気迫る顔をして……いや、変われば変わるもんだ」
「……だったんだ」
「え?」
 俺はもう一度、小声で繰り返した。
「俺の勝手な八つ当たりもあったんだ。何と言うか……おまえも聞いたと思うけど……東京がどうこうと色々あったから……だから、それは……済まなかった。俺も謝る」
 俺は思いきって、右手を差し出した。
 驚いたようだったが、平賀もすぐにそれに応じた。
 恐らく、長い好敵手としての歴史上で、但馬館と修学院の生徒会長二人が握手したのは初めてだろう。まさかこんなことが起きるとはな――
 二月からずっと周囲が騒々しくて、心中でも穏やかではいられなくて、泣いているあいつの姿が頭から離れなくて、強引に転校話を進めていた親父に腹が立って――
 それでも、それがこんな形でうまく収まってしまうとは。
 一ヶ月前には予想もできなかったことだ。
 いるかがいなきゃ、こんな展開にはならなかったような気がする。あいつはいつも全力で戦って、但馬館を倒してきたけれど恨まれてはいなかった。
 しかし今度のことだけは……スポーツと関係のない場で、女相手に姑息な真似をした連中に俺は本気で怒ったけれど、それでも最後には、嫌な後味を残したくないと思えるんだ。
 不思議だ、本当に。
 これは全部、おまえの力なのかな。いるか……
「まあ、来年もうちと何とかうまくやってくれ。僕はお先に、高等部へ行くけどね」
「ああ……そうだったな」
 俺も、年上の先輩に向かって大概えらそうな口を聞いているんだなと、そんなことを今さら反省してみた。まあしかし、両校の生徒会長という立場だから仕方ない部分が大きい。
 そもそも俺も、一年二年の年の差なんてあまり――今まで――考えることもない、傲岸不遜のガキだったからな。……それは今でも同じか。
「如月くんに、済まなかったと――それから、鹿鳴会の皆にもよろしく伝えておいてくれ。いい稽古だった」
「ああ。……四月からはもう会うこともないだろうし……元気で」
「なんの、高等部に上がるだけさ。元気でな、山本」
 平賀はまた眼鏡を指で持ち上げて、小さく笑った。
 そして、廊下の向こうへ去っていった。
「……」
「春海?」
 楽屋口から出てきたらしい。
 まだ少し怯えているような、半信半疑といった響きの声がした。
 振り返りたくて、でもしばらくはその声を反芻していたくもあって……
「春海」
 俺は振り向いた。小さなマリア……が、そこに立っていた。
「うん」
「平賀会長……だったの?」
「ああ。おまえに謝っておいてくれって」
「……」
 いるかは俺を見上げて――もう髪は、結わえていたリボンも外れてもとに戻っていた――心配そうに言う。
「あのね……春日丘さんのこと……あんまり怒らないで」
「分かってる」
「……」
「……」
 俺はいるかの手を掴んだ。
 そう、今日はこういう日なんだ。
 今言わなきゃ、いつ言うんだ? 今じゃないと意味がない、そんな日だから。
「行かないから」
「……」
「ここにいるから、絶対な」
「うん……」
 やっと、本当に、心から安心したようにいるかは笑った。
 すぐそこに楽屋があって、うるさい奴らがみんな待ってる。だから今は、伝えることしかできないけれど――
 本当なら、今すぐ……
 もう一度、もう一度抱きしめたいんだけどな……
「へへ……あたし、髪ほどいただけだし、春海もメイク落として着替えなきゃ」
「そうだな。もうこんな時間になっちまったのか」
「だって、始まったのが遅かったしさ……」
「七時前ぐらいだったっけ」
「あれ、六時半ぐらいじゃなかったっけ?」
 いるかの背中を押すようにして、楽屋へ帰る。
 皆の笑い声、聞きなれた声が耳に飛び込んでくる……
 あと一歩でその中に入る、というところで、最後にもう一度だけ呟いた。

「俺は、ここにいるよ」

 まだほんのり紅いくちびるが、はにかんだように微笑んだ気がした。












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小林りり子
性別:
女性
自己紹介:
妄想を垂れ流す女。
当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

当ブログは、非公式の個人ブログです。
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