[10回]
近所に咲いていた花蘇芳です。
本当に、なんでこんな場所に? というようなところに、ぽつんと。
もっとかたまって咲いていたら春海ん家の雰囲気が味わえるのになあ。
いつかあたしたち、家をつくったらね。
花をたくさん植えたいな。
倉鹿の春海の家みたいに、春にはピンクのハナズオウ。
もちろん、桜も見たいよね。
そして夏には芙蓉が咲くの……
いつかいつか、倉鹿みたいな家であたしたち、暮らすのかな。
ここが東京でも、ずっと東京で生きてても、いつも思い出したいから。
春に桜が咲いて、ハナズオウも満開になって――あたしはもしかして。
もしかして、赤ちゃんをだっこして春海と並んで花を見てるの。
そんなこと想像するの、ちょっと早すぎるかな?
でも、本当にそんな家だったら……素敵だね。
あたしが永遠を約束するあなたの庭には、花が咲く。
いつかおまえを本当に俺の腕に抱いて、確かめ合えたら。
いつか約束を果たす時が来たら、花を植えておまえを迎えよう。
倉鹿のように、城と桜ってわけにはいかないけどさ……
あの庭に今でも咲いているハナズオウ。
母の面影と、「しとやかな恋人」という言葉を持つ芙蓉の花と。
生まれてからずっと見ていた町、そこから遠く離れても。
いつでも思い出せるように――本当は、おまえさえいればいいんだけど。
まったく、誰が庭を整えたり世話したりするんだよ? って思うけど。
いつか……おまえが俺の……俺だけの白い鳥になったら。
そして、もしかして、いつか小鳥が生まれたら……
鳥たちのさえずり、宿る木が必要だろう?
そういう家が欲しかった。泣きたくなるほど、ずっと欲しかったんだ。
真のオチ
「桜とハナズオウと芙蓉とね……それからそれから……りんご、みかん、いちじく、きんかん、それに柿かな! 栗ってのもいいなあ」
「…………」