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こちらは、大昔の少女マンガ「いるかちゃんヨロシク」をお題とした二次創作ブログです。目指せ! 春海しあわせ計画。 ☆絵と文章:小林りり子☆ ★閲覧の際はご注意下さい★ 激しくポエム、激しく自家発電、激しく自分絵(らくがきレベル)。突然、時系列をワープする無節操さ、唐突なファンタジー設定、微妙にR18要素あり。
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 物心ついてからずっと、頭の良い子、優秀な少年だと思われていた。――それは今に至るまで。
 何をやっても人並み以上で、どんなことでもそつなくこなし、口も立つ。教科や種類を問わず勉学、スポーツは得意だったし、目に見える結果が得られるので自分でも好きだった。
 もちろん彼は相応の努力をしたのだが、人に知られるのは嫌だった。
 そんなこんなで、中学生になる頃にはすっかり『文武両道』の見本のような少年が完成した。倉鹿市の子供なら誰もが憧れる修学院に君臨し、ある種の権力さえ牛耳り――
 傍から見れば傲慢に見えたかもしれないし、実際そうだったことは否めない。
 突然に母がいなくなったやるせなさ、辛さを埋めるには体を動かすことしかなかった。
 疲れ果てて眠れば泣かずに済む。そして兄として、たったひとりの弟の模範にならなくてはいけない。何よりも、地元の名士である父の名に傷をつけることなど許されない。
 父も母も、息子に何かを強要したことはなかった。けれど口に出さなくても察せられた。子供は、大人が思う以上に敏感なものだから……
 鹿鳴会という名の生徒会室が王座の、可愛げのない中学生だった。
 あの頃、ほんの少し退屈だということを自分でも自覚したくなかったのだ。何をやっても人並み以上にできてしまう――それが当たり前になり、心を動かされなくなってしまった自分と対峙したくなかった。
 心を躍らせる方法を知らなかったし、それまでの世界が変わるとも思っていなかった。
 山本、おまえは何でもできて器用だな。本当にそつがないな――周囲からはそう思われていたし、自分でもそうだと信じ込んでしまって疑いもしなくなった頃。
 ひとつの出会いがあった。
 何か月もかけて、ゆっくりと……ようやく世界は動き出す。
 そして一年ほど時が過ぎ――
 力づくの蹂躙ではなかった。武器は小さな指、小さなくちびる。大きな目……硬くなりかけていた殻は破壊され、もう一度生まれた彼の上には春の陽が注がれていた。


「ああ、もうっ!」
 たまらないと言いたげに、彼女は叫んだ。
「あたしこんなの嫌いなのに、もうやだあ……また怪我するよ、絶対」
「いいから、さっさと手を動かせって」
 いるかはため息をつき、仕方なさそうにまた作業に戻る。
 とにかくどんな物体になろうと、課題は仕上げなくてはいけない。図画工作の類は苦手な彼女にとって、手芸も裁縫も鬼門でしかないのだ。
 里見学習院からの帰り道、何度も針で指を突いた、という話を聞いて春海はそのまま彼女を自宅に連れていった。
 彼の監視の下、いるかはぎこちなく針を動かしているという次第だったのだ。
「ゆっくりでいいんだから、急ぐなよ。針先をちゃんと見て――あのな、俺を見てどうすんだ、おまえ……ああ、それじゃだめだ。ちょっと貸してみろ」
 彼女から布と針を受け取って、春海はすいすいと針を動かしていく。
 いるかは心底、感嘆したように彼の手元を見つめた。
「春海、すごいねえ……お裁縫までそんな上手にできるなんて」
「ユニフォームとか、たまにほつれて縫うからな。それに、ボタンだって取れたりするだろ」
「藍おばさんに頼まないの?」
「そりゃ頼めばやってくれるだろうけど、自分でする方が早い」
 春海はそう答えながら縫い続け、ふと顔を上げた。
 いるかが盛大に肩を落としていたのだ。
「……なんか落ち込むなあ。タクマは裁縫が得意だし、春海も……あたし女だけど不器用だから、生まれつき器用な人にはかなわない」
「おまえの場合、最初っから諦めてるのがいちばん問題なんだよ。――ほら、続き」
「あたしのと縫い目まで違う……春海の方がきれいだあ」
 また、大きなため息。
「……」
 春海は何も言わず立ち上がり、いるかの背後へと移動した。そして、後ろから彼女の右手を取って、針を押さえる。
「こうやって」
 左手では布を持ち、いるかによく理解できるように同じ姿勢で説明する。
「待ち針で指突くのが怖いんだろ? そういう時は……こんな感じで……そうそう。しっかり持って」
「こう?」
 振り向きたくても、密接しすぎて振り向けない――針を持ちながらよそ見をする訳にはいかないので――いるかが、縫いながら呟く。
「こんな感じ?」
「そうそう、さっきより縫い目が細かくなった。まっすぐだし」
「ほんと? じゃあ、さっさと縫っちゃおう……」
 早速の成果に、いるかは嬉しそうに作業に没頭する。いつまでもこんな態勢は不自然だと思いながらも、春海は彼女を後ろから見つめていた。
――寄りかかってくれたらいいのに。
 抱きかかえさせてくれたらいいのに。こんな状況でもまったく疑問に思っていない彼女の様子があまりにあどけなくて、彼は結局、動けない。
「……こんなの、玉子たちに言ったら呆れられるだろうな」
 手は動かし続けながら、いるかが笑った。
「春海に手取り足取り、お裁縫を教わりました。なんてさあ」
「……」
 それはちょっと人聞きの悪い、と春海は心中こっそり呟く。
 確かに、手は取っているのだが……
「まあ、いいけどさ。あたしがすっごく不器用で……春海は何でもできて器用だってこと、もうみんな知ってるもんね」
「……俺、器用か?」
「器用じゃん! 春海が器用じゃなかったら、いったい誰が器用なんだって話になるよ……」
 叫ぶようにいるかが言う。
 それっきり、彼女は針の終着点を目指して黙り込んでしまった。

 何でもできて、そつがなくて、優等生で退屈だった数年前。
 そして今――
 思い通りにならないのはもどかしいけれど、それでもいい。思い通りでなくていい――勢いを増す一方で途切れることのない感情を、相手に知ってほしいだけ。
 何ひとつ力を持たず待ち焦がれるだけの自分など、あの頃には想像しようもなかった。
 万能、という言葉の何と脆弱なことだろう!
 そんな脆い世界に属する人間でなくてよかったと、彼は思う。
 彼女の前にいる時は、器用でいたくない。
 どうせ器用ではいられない。

「できた! やっとできた!」
 ほうっと、安堵の声が聞こえてきて春海は我に返る。
 いるかが、何とか形になった小さなサイズのバッグを手にしていた。
「ほら、やりゃあできるんじゃないか。提出は明後日か……間に合ったな」
「ありがと! でも――これ見て、見て。最後の方はちょっとましになったけど……あたしと春海の縫い目の違い、はっきり分かっちゃう。ほんと、春海って何やっても器用なんだね。うらやましい」 

(おまえはさ、何も分かっちゃいないんだよ)
 不器用な彼は、針と糸から解放された彼女との距離を少しだけ縮める。
(他のことが何でもできるからって、これだけは……)

 首を傾げながらも安心したように寄りかかってくる彼女を抱きとめ、その甘くはかない重さを春海は噛みしめるように味わった。
















 *****



 時系列としては、高1の秋(家出前)ぐらいかな。

 春海が実は家事も人並み以上にできて、簡単な料理なんかはちゃっちゃと手際良く作ってしまう(そしているかが落ち込む)……というネタもあるんですけど、それはまた気が向いた時に。

 文中では説明できませんでしたが、徹と藍おばさんは留守です。






拍手[27回]


● 無題
こんばんは。コメント送信しましたが、届いたでしょうか?申し訳ありません。重なるかもですが再度送信させて頂きます。


努力で何でも手に入れた春海くんも 一番大事だからこそ、失いたくないから強引に進めない。そういう時期でしょうか?二人で裁縫をするシーンが可愛いです。暴走春海くんもとても良いですが
いるかちゃんを大事にしながら抱える春海くんも良いです。
これからも短編長編シリーズを楽しみにしています。ありがとうございました。
【 2014/09/28 19:51 】 NAME [ささき] WEBLINK [] EDIT []
Re:コメントありがとうございます。
ささき様、こんばんは。
コメントの送信エラーについては、別記事を更新いたしました。
そちらをご参照下さい。
「管理人へのコメント通知メールが届かない」というトラブルが9/10頃から発生しておりますが、書き込みでのエラーというアナウンスは現状出ておりません。
しかし当ブログでも既に2件(ささき様含む)送信エラーのご報告が上がっておりますので、今後も頻発するようであればブログ側に報告するつもりです。
(今回のコメントは、重複せずに一通のみ届いております)

ご感想ありがとうございます。
春海は優秀で器用で何でもできるけど(努力もしているんだろうけど)、恋だけは……どうにもならないな、という話ですね。
ほんっと器用だね春海は、といるかに言われるたびに「いえいえ、全然」と心中で反論してると思うんですよ、私は(笑)。
思い通りにいかないけど、それでもいいか……そういうのが恋なのかな……
今までほとんどのことが思い通りになってきた(と推定される)春海だからこそ、もどかしいけどそれでもいい、という実感があるんじゃないでしょうか。

見ようによってはとっても危ない(?)態勢なのに、16歳いるかはまだのほほんとしてますね。でも家出前だし、お見合いもしていない時期なのでこれでよし!(笑)
17歳いるかだと、このような「穏和な雰囲気で、ぴったりくっつく」というのは不可能かもしれません。一年前とは違う反応になると思われます。
気の毒なのはやっぱり男の方で、14歳だろうと17歳だろうと考えることは常に同じですからね。
今回は16歳の話ですが、最新の時系列を書いていても思います。
いろいろ、つらい時期だろうなあと。
でも、その悩みこそが恋をしている証拠ですので、今後も春海さんには耐えてもらわなくてはいけません。
コメントありがとうございました!
【2014/09/28 22:29】
● 送信テストです
ささき様、コメントありがとうございます。

拍手コメント&コメント欄の送信でエラーが発生しているのでしょうか。
私はいつも管理画面からのお返事を送信していますので、事態を把握するために送信テストをさせていただきます。

管理者側のトラブルは確かに9/10頃から継続して続いています。
しかし、皆様の投稿そのものには関係ないはずなのですが……


【 2014/09/28 20:29 】 NAME [小林りり子] WEBLINK [] EDIT []


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小林りり子
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女性
自己紹介:
妄想を垂れ流す女。
当ブログは「いるかちゃんヨロシク」専用になりました。
2013.3/4、旧「愛のうた~」よりお引越し。

当ブログは、非公式の個人ブログです。
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