[17回]
「……下が、雪で、よかった」
それ以上、近づかないで。
そんな、聞いたことのない低い声……近くで呟かないでよ。
寒いはずなのに、冷たいはずなのに、雪が一瞬で溶けちゃう気がする。
それに……春海、重い。
顔が……近い。
どうしよう、さっきまで頭がふらふらしてたのに、春海から目を逸らせない。どうしよう、どうしたらいいんだろう。
――そう思った途端、春海がうつむいた。
「酔ってるのかな……」
きっとそうだね。
あたしたち、二人とも酔っ払ってるんだよ。
だって頭がぐるぐる回る……
冷たい。
でも、熱い。
苦しい。
体のどこかが、痛くてたまらない。
でも分かる。あたしは分かってる。これは、倒れ込んだ痛みじゃないってこと。
起き上がろうとしたら、力が入らない。
「腰が抜けた」と言ったら、春海が困ったように笑って、あたしを引き起こしてくれた。
何とか、必死で、会話して。
何もなかったかのように「明日は頑張ろう」って言い合った。
部屋に戻っていく時、あたしは思わずにいられなかった。
どうしても、心の中でこう言わずにはいられなかった。
――いつから、こんなに好きになっちゃったんだろう?
きっと今、振り返ったらまだ春海が立ってる。
そう思うとまた、痛い。
いつから、あたしの中で特別になったんだろう。
最初のうちは、いかにも何でもできる優等生って顔して、偉そうで、あたしをバカにしてて……
でも時々は、優しかったりもした……
だめ、考えるのはやめよう。
酔っ払ってるんだから、考えるのは無理……
いっそ、また、雪に頭でも突っ込んでみようか。きっと冷たすぎて、氷みたいで、頭が冷える……
答えなんて知りたくない。
分かるようで、全然分からない。
知っているかもしれないし、あたし一人の思い込みかもしれない。……春海はあの子が好き?
かわいい、いとこの女の子。
あたしとまるで違う女の子……
好きな子っているの?
春海、本当はだれが好きなの?