[3回]
「山本春海は、21世紀言語で言うところの『ツンデレ』キャラクターではないので、某ときめき大ヒットマンガの魔界の王子様に置き換えるには無理がある――という結論に達するのである」
「……」
「かの魔界の王子様は、人格・環境設定が『不良』『ボクサー志望』『母ひとり子ひとり』というもので、山本春海というキャラクターとほぼ相反していると考えてよいだろう。
何よりも、かの王子様のデレなさ具合は山本春海のはるか上、という事実がある。
ツン成分が2巻ラストで99%消滅し、その後ひたすらデレデレデレ×100万回といった山本春海の言動とは真逆を行くものである。つれない男に泣かされるヒロインという意味でも、泣く吸血鬼娘と、そういう経験のほとんど無い如月いるかは真逆の存在なのである」
「……」
「よって、ときめき大ヒットマンガではなく、この作品に強烈な魅力を感じる一人・小林りり子の自己分析を引用すれば、
『割と分かりやすい少女の夢……多少の語弊もあるが、少女に都合のいい男――という意味では王子様より春海の方に軍配が上がるのではなかろうか。
ただし春海は指導者属性のある、精神年齢がかなり底上げされているキャラクターでもあるので、その面で王子様ときっちり棲み分けが成されていたような記憶がある。いやまあ私も、正直言って二十数年前の記憶だけで(特に熱心なファンでもなかった)ときめきマンガのキャラクター性を語るのは無理があると承知しているので、ここはご容赦願いたい』
――ということになる」
「……」
「……何のことだか、あたしにはサッパリ分からないんだけど……原稿、棒読みしただけで……」
「と言うか、俺って……王子様キャラなのか?」
「とりあえず、あたしはお姫様じゃないよねえ。そんな柄じゃないもんね」
「いや、おまえはあからさまに、月に帰っていくお姫様ベースだろうが……」
「そう言えば、じいちゃんに大事にしてもらってたっていう意味では、確かにかぐや姫っぽいかも。
でもさあ、別にあたし、求婚者たちに無理難題押し付けたりしてないし」
「なんでだよ。おまえ、俺には無理難題っていうか、試練を与えてくれただろうが。東京に来れるもんなら来てみろ、この恋はそこまでする価値があるのかどうか……っていう……
自分で言っててあれだけど、俺、やっぱり、自分を抑えて抑えて、好きな女にも意思表示がうまくできないような男――『不器用だけど、実はすごく愛してくれてるちょっとヒネた彼★ 』っていうのとは真逆だな。うん、我ながらそういうのは無理だと思う。
まあ俺も、転校騒ぎの時はかなり抑制してたはずだが、その後のタガの外れ方が酷かったからなあ……」
(自分で言うな、自分で)
*****
そうね、あんた、手が早いもんね。
(曖昧な記憶で申し訳ないけど)魔界の王子様みたいに、照れて照れて肝心な言葉が言えないなんていう初々しさが、まったくない高校生だもんね……
私に絵心があったら、いるか裸マントでスーパーラブローション♪ シャンプーの香りには気をつけてね♪ とか、実にふざけた挑発をしている動画を作ってあげたいが、無理ですわ。
個人的なイメージですが、もし私が、マンガのことをよく知らない誰かに「春海っていうのはこんなタイプ」だと説明するとしたら……
「まあ要するに、赤毛のアンのギルバートだよ」と言うと思います。
括りとしてはすごく大雑把だけど、分類上は間違っていないと思うので。